大学病院との病診連携を視野に、脳神経外科クリニックを開業

カテゴリー:
診察科目:
内科 ,脳神経外科

三鷹市杏林大学病院脳神経外科で診療に携わってきた山口竜一先生は、急性期治療後の患者を受け入れる地域の受け皿の必要性を痛感。大学病院へのアクセスもよい仙川駅近くに、MRIやCTを備えた専門クリニックを開業されました。

●まず、開業に至るまでの経緯を教えてください

脳神経外科を選んだのは、外科系に進みたかったことと、専門性の高い領域に取り組みたかったこと、そして脳や神経はその機能局在と症状が1対1になっていることに興味を覚えたことなどからです。杏林大学病院の脳神経外科に入局し、脳動脈瘤や良性腫瘍、脳卒中などの手術を主に手がけていました。

大学病院では、患者さんの退院後の生活習慣病の管理などは近隣のクリニックに紹介しなければとても診ていけない状況でした。一方でMRIなど定期検査には来てもらわなければならないので、ホームドクターと大学病院と2つ通うことになります。大学病院の北側、JR三鷹駅方面には、医局の先輩が開院されたクリニックがあり、安心して患者さんを託すことができました。しかし、病院の南側、京王沿線には適当なクリニックがなく、退院後の患者さんの診療・検査・投薬までできるクリニックを大学の南側のエリアで開業したら、病診連携がうまくとれるなと漠然と考えていました。

山口 竜一 院長
山口竜一 院長

●開業するために、まず、どのような行動を起こされましたか

受付

まだ具体的に開業を決心しているわけではなかったのですが、脳神経外科ならばMRIの導入は不可欠だと思い、医療機器のリースについて調べたりしていました。たまたまJA三井リースのサイトに繋がり、そこからメディットが開業支援をしてくれることを知り、仙川駅周辺で物件を探してほしいと依頼しました。2015年の4月のことでした。

開業するなら仙川でという思いは当初からもっていました。杏林大学病院へのアクセスがよく、仙川からバスに乗って来られる患者さんが多かったので、ここで開業すれば病診連携がとりやすく、患者さんにとっても大学病院にとってもメリットはあると考えていたのです。また私自身が10年以上近隣に住んでおり、土地勘もありました。仙川は大きな駅ではありませんが、駅前に商業施設が多く人通りもあり、また世田谷区など東京23区に近いため、脳ドックなどに興味のある健康意識の高い人も多いと考えられ、開業するには最適だと思っていました。


●適当な場所はすぐに見つかりましたか?

けっこう難航しましたね。仙川駅周辺には、脳神経外科クリニックに適した広めの物件は見当たらず、やっと見つかったのがこの場所です。広さはクリアしても、建物がMRIの重さに耐えられるか、音や振動、磁場を防ぐシールド工事の許可が得られるかなどが最も懸念される問題でした。建物のオーナーの了解だけでなく、上階が分譲マンションであったため、管理組合に諮って区分所有者の承認を得る必要もありました。すべてメディットが交渉してくれましたが、3ヶ月ほど時間がかかり契約できたのは2016年の1月末でした。

メディットの担当者からは「物件が決まり開業が確定するまで、大学病院は辞めない方がよい」とアドバイスされました。しかし、あまりギリギリになると大学にも迷惑をかけますから、結局、開業が確定する前の2015年年末に、翌年3月末で退職したい旨を伝えました。もし開業できなかったらどこかに勤務する覚悟でした。

●場所が決まってからは、どのように開業準備を進められたのですか?

場所の次は、医療機器の選定です。先輩に聞いたところ、いろいろアドバイスしてくれたのですが、結局、よくわからなくて(笑)。メディットが業者を数社選定して相見積もりをとってくれたのを検討して決めました。MRIは最新鋭の3テスラMRIを導入するつもりでしたが、スペースや稼働率を検討した結果、最終的に1.5テスラMRIを導入しました。

スタッフ募集や内装工事についても、メディットに広告会社や税理事務所、工務店などを紹介してもらいました。メディットが軸となって、開業に必要なことをすべて順を追ってアドバイスしてくれたという感じです。内装について私がこだわったのは、脳神経外科は機械が多くて硬質なイメージがあるので、待合室は北欧風の白と木目を基調としたデザインで、リラックスできる雰囲気にすることでした。スケジュール的には、内装工事にかかる期間やMRI搬入のタイミングを勘案して、6月開院を目標に準備を進め、最終的に7月開院となりました。

MRI

●開業準備期間を振り返って、印象的なことは?

いちばん嬉しかったのは、MRI導入やシールド工事の許可が出て、この場所が決まったときですね。これで本当に開業できるという実感がわき、やっと第1段階をクリアしたと思いました。

苦しかったのは、開業直前の6月後半です。人を採用したり設備を導入したり、短い時間で決定しなければならないことがたくさんあり、毎日「あれもやっていない、これも決まっていない」と焦りました。忙しくて睡眠不足なのに朝早く目覚めてしまうような状態で、一時はホントに投げ出したくなりました(笑)。でもメディットの担当者に「どんな先生でも開業直前はブルーになるもの。ここで健全にブルーになっておく方がいいですよ」と励まされ、そんなものなのかなぁと思いながら、何とか乗り切りました。

●実際に開業してみて、どのような思いを持たれましたか?

待合室

開業までは大変でしたが、開業後は、日曜日は休めますし、当直や夜中の呼び出しもなく、自分のペースで仕事ができているなと感じるようになりました。大学病院勤務は、今から考えるとやっぱり激務でした(笑)。一方で、開業医は個人事業主ですので経営者としての責任が出てきます。運転資金やスタッフの給料など、いままでにやったことのない業務が増え、お金の計算ばかりしていて医師ではない気がしています(笑)。早く軌道に乗せて落ち着きたいと思っているところです。

診療面では、開業してよかったと思うことがたくさんありますね。ずっと頭や脳神経のトラブルで悩まれていた方や、大学病院で私が手術した患者さんなどさまざまな患者さんが来院され、日々の出会いが新鮮で楽しいと感じています。大学病院ではかかりつけ医のように患者さんに寄り添うことが難しいですが、ここでは、治療後の生活指導や、生活習慣病の管理などを通して患者さんと長く深くお付き合いできるのがよいですね。また開院時にホームページや内覧会を通して脳ドックをアピールしたところ、3ヶ月先まで予約が埋まり、潜在的なニーズがあることも実感しました。


●メディットについてはどのように評価されていますか?

メディットは無償でサポートしてくれるのが非常に助かりました。メディットは開業後も長く付き合っていく形になるため、いわゆる有償の開業コンサルタントとは異なるスタンスで動いてくれるところが非常に良かったと思います。 また、私自身、医療以外のことはあまり知識がなかったので、すべて教えてもらい、助けてもらったという印象があります。資金調達についてもメディットのアドバイスで、メインバンクにはクリニックの開業支援を積極的に行っている地方銀行、足りない部分はノンバンクも利用しました。資金調達も比較的スムーズで、MRI設置許可が下りた直後すぐにテナント契約だったのですが、それにも間に合わせることができました。

メディットの担当者は、特定の業者を推すような押しつけがましいところがなく、相見積もりなど客観的なデータを提供し、今までの実績から的確なアドバイスをしてくれたのが良かったですね。またメディットを通して紹介された人物や企業は信頼でき、仕事も確実でした。開業には、今までは接したこともないようなさまざまな業種の方の協力が必要なので、そういった信頼できる人脈があることが非常に重要だと痛感しました。

受付

●開業を考えているドクターには、どのようなアドバイスをされますか?

最近は、脳神経外科領域での開業ではMRI導入は必須になってきていると感じます。MRIという"武器"を持っていないと内科のクリニックとの差別化は難しいと思います。ほかのどの診療科でもそうだと思いますが、自分がどんなクリニックをやっていきたいか、専門領域で何を武器にして診療するかを明確に持っていないと患者獲得という面では厳しいのではないかと思います。 そして、やはり立地は大切だと思います。開業してみて、大学病院へのアクセスと、人の集まるところという点で、仙川にこだわったのは正解だったと確信しています。

●これから、目指すところをお聞かせください

待合室

大学病院の脳神経外科には多くの患者さんが集中し、検査は2週間先、3週間先ということも珍しくありません。その点、当院では、必要に応じてすぐにMRIやCTなど検査ができ、その日のうちに診断して治療に結び付けることができます。連携体制も整えていますので、より専門的な治療が必要な場合は、杏林大学病院をはじめ大きな病院に速やかに紹介することもできます。地域医療の中で、専門性と利便性を兼ね備えた脳神経外科クリニックが果たす役割は大きいと展望しています。

また脳疾患には、動脈硬化など生活習慣病が原因となるものも多いので、脳神経外科の立場からの生活習慣病の予防やコントロールは、私の専門性を活かせる領域として力を入れていきたいと考えています。将来的には、かかりつけ医として内科領域の幅も広げてゆきたいですし、地域の他科目のクリニックにMRIを活用していただくような診診連携にも取り組みたいですね。

目指すのは、気楽に来院でき、しかも専門的な検査や診断ができる脳神経外科クリニックです。ホスピタリティーとプロ意識を心がけ、患者さんやスタッフ間のコミュニケーションも大切にしながら、この地域の皆さまの役に立つクリニックでありたいと考えています。